咲き誇れ。

この瞬間のキセキを表す言葉はどこにあるのだろう?  ***ジャニヲタ英語部参加者募集中!***

JUST DANCE! Together!!!!!!!

私は知っていた。そこで見た景色を、観客の顔を。日本時間の2022年7月13日に配信されたAmerica’s Got Talentのオーディション映像のことだ。私はLAはもちろんのこと、アメリカにさえ一度も行ったことがない。けれど、輝く衣装に身を包んだ男の子たちがステージの上に立つ。少しの会話をする。拙くとも真っ直ぐな言葉で話す真摯で愛すべき姿に観客の顔がほころぶ。そして『夢のハリウッド』のイントロが始まるや否や、その圧倒的な輝きに惹き込まれる。心の底から湧き上がる高揚感に身を任せ、いつの間にかリズムに乗って体を揺らしている。もしくは、頭を殴られたかのような衝撃に微動だにせず目を離すことができないでいる、その景色を私は確かに知っていた。


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それは他でもない、ジャニーズJr.内ユニットTravis Japanの、日本でのステージに足を運んだ時に、会場で私が見てきたものだ。殊「夢のHollywood」のイントロが始まると、会場の盛り上がりは最高潮に達する。なぜなら、「夢のHollywood」は彼らの初のオリジナル曲であり、ステージに立つ喜びと覚悟を歌った曲。そしてファンさえ呆れてしまうほどに、メンバー自身が大切に思っている曲(だって本当に夢のHollywoodの歌詞を実現してLAに行ってしまうくらいなのだから!)だからだ。そんな「夢ハリ」が英語詞となり、America’s Got Talentのオーディション会場に響き渡る。日本で長年彼らを見て来たファンなら感極まって当然とも言える光景だ。

 

しかし、AGTのオーディション会場にいる観客達は知らないはずだ。彼らの思い、バックグラウンド、歩んできた道、何もかも。それでも、ステージを見つめる観客達の表情は、私が見て来たファンと何ら変わりはなかった。むしろ、アメリカの風土によるものだろうか、それとも初めて見るよくわからないものへの興味だろうか、ステージを見つめるその瞳はキラキラと輝き、次第に一緒になって体を揺らし、曲終わりにスタンディングオベーションで拍手喝采を舞台上に送るその様子はむしろ日本よりも盛り上がっているようにさえ見えた。日本ではない場所で、彼らのことを何も知らない、偶然そこに居合わせた観客を、最高の笑顔にする。私はこの映像を見た時に、彼らが目指す未来への道筋が、ほんの少し見えたような気がした。

 

Travis JapanはLAで受けたインタビューで”How do you define success?”(成功をどう定義するか)と聞かれ、”not something externally quantifiable”と答えている。「客観的に数値化できるものではない」とでも訳せるだろうか。

http://voyagela.com/interview/life-work-with-travis-japan-of-hollywood/

昨今のアイドル界隈は、もっぱら数字至上主義といっても良さそうな様相を呈している。いや、もともとそうだったものが昨今のSNSや動画媒体の普及により加速しただけかもしれない。その中で、アイドルが数字をゴールに置かないで進む道が険しいだろうことは容易に想像がつく。それでも、この彼らの価値観が格好だけのものでないことは、10年間の彼らを見ていればわかる。では、彼らにとっての「成功」とは何なのか。

 

ここからはすべてファンの妄想なので、陳腐な言葉でまとめてしまうことを大変申し訳なく思うのだが、彼らの言動行動はすべて”love”と”appreciate”にその動機がある気がしている。自分達を取り巻く周囲の人々への愛と感謝、ショーへの愛とショーができることへの感謝。もっと言うと、自分たちを作り上げたジャニーさんやTravis Payne氏、お世話になったジャニーズの諸先輩方に感謝をし、その人たちから貰ったものを誇りに思い守り抜くこと。またその人たちが積み上げてきたもの、作品に最大限の敬意を払いそれを受け継いでいくこと。そして何よりファンを幸せにすること(それさえも彼らは「恩返し」というのだが)、をファーストプライオリティとし、それを貫くために、時に自分たちが柔軟に形を変え、既存のやり方を変え、時に壁を壊すために身を呈して闘ってきた10年間だったように見えるのだ。

 

World Of Danceの本選でTravis Japanが踊ったのは、彼らの全てのオリジナル曲をリミックスしてつなげたナンバーだった。この大会では「テーマ性」が重要視されるとのことだったが、その大会に彼らは「Travis Japan」(およびJapan)をテーマにし挑んだ。おそらく、このテーマ選定と曲の構成は、ジャッジには不利に働いただろうと思う。それでも、彼らはあくまでも「ジャニーズのTravis Japanであること」のプライドを高々と掲げ、アメリカでも、たとえ不利に働こうとも、その旗を下ろすことはなかった(さらにそれで世界9位とベストオーディエンス賞を勝ち取った)。結果を残すために、現地の審査員や観客の好みに寄せたパフォーマンスで挑むだろうと思っていた往年のファンは、聞き慣れたTravis Japanの曲と、見慣れたTravis Japanらしい、いやもっと洗練されたステージに安堵し感激した者も多かったのではないだろうか。


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こんなこともあった。Travis Japanが結成するきっかけとなった舞台PLAYZONEは、2015年に惜しまれながら青山劇場の閉場とともに幕を下ろした。しかし、Travis Japanはその後の自分たちのステージで、PLAYZONEの楽曲を数年やり続けた。さらに、松松(松倉海斗、松田元太)加入後には松松および(川島)如恵留が出演していた堂本光一主演舞台Endless SHOCKの楽曲も自分たちのコンサートで披露している。これらの楽曲は、なんだか権利の問題だかでコンサートで使うことが不可能だと聞いたことがあるので、ファンとしては驚いた後に狂喜乱舞したものだ。聞けば、なんとか自分たちのコンサートでやらせてもらえないかと上と闘ったそうだ。

 

ところで、WODの振り付けはメンバー全員が分担して行ったらしい。普段から振り付けを考えているメンバーだけではなく全員で担当し、そうして完成したステージは素人目にはどのパートも遜色なく、個性がありつつもまとまっている、一言で言うと素晴らしいものだった。これを聞いて思い出したことがある。かつて2015年の冬に青山劇場が閉館を迎える、その最後の公演となるPLAYZONEのステージで、Travis Japanは「どうなってもいい~It’s BAD」というナンバーを任された。彼らはそのナンバーのセンターを日替わりで担当していた。後に発売されたPLAYZONEのDVD特典映像でその理由を「皆が青山劇場のセンターに立ちたかったから」だとコメントしていた。私はアイドルになったことがないのでわからないが、普通は大事なナンバーでセンターを任されたらその場所を誰にも譲りたくないものではないのかと想像していたので、かなり驚いた。歴史ある、そしてお世話になった青山劇場の真ん中に、メンバー全員が立つ。その時、他人から自身への賞賛や名声よりも、大事なものが他にある子達なんだなと思ったものだ。ただし普通、「皆でやりたい」そう言ってできるものでもないだろう。メンバーが7人もいたら、センターになる子と、実力的にそれが難しい子がいておかしくない。しかしTravis Japanはそれを成立させて有無を言わせないだけの実力を各々が持っている。センターがころころ変わるダイナミックで美しいフォーメーションはらのパフォーマンスの特長で、私はそれが大好きなのだ。

 

Travis Japanの一番の魅力は何だろうか。America’s Got Talentの審査員でありOne Directionのプロデューサーでもあるサイモン・コーウェル氏はオーディションのパフォーマンスを見て彼らをこう評価した。

The energy was through the roof.(熱量が凄まじい(天井を突き抜けている))

熱量がすごいなんてあまりにも抽象的で、パフォーマンスを見ていない人にとってはほとんど何も説明されていないのと同じだ。おそらく、雑誌の記者がコンサートレポでこれを書いたらボツになるのではないだろうか(知らんけど)。しかし、この「熱量」という言葉がまさに彼らの魅力を表すのに的確な気がしてならない。

 

では、この抽象的な「熱量」とやらを少し具体的にしてみよう。私はダンスのことも歌のこともエンタメのことも何もわからないが、この実体のないように見える「熱量」とはおそらくファンタジーでもスピリチュアルなものでもない。目に見え耳に聞こえ五感で私たちが受け取ることができる物理的なものを、彼らが技術を磨き、0.1秒、0.1度、0.1mm単位で工夫し調整して魅せている成果として、私たちは「熱量」を感じることができると推測している。そうした「熱量」は、日々のたゆまぬ努力によってしか生み出せないものでもある。一人だけなら、それをたやすくやってしまう天才もいるかもしれない。でもグループの場合、ましてや7人全員が揃っているには、そこにたとえ天才がいたからと言ってどうにかなるものではない。全員が同じ方向を向いて努力して初めて、美しく熱量の凄まじいパフォーマンスができる。

 

ただ熱量を構成しているものの中に一つ、スピリチュアルというかどうしても実際的に説明のつかないことがある。Travis Japanのステージを見ていると、彼らのダンスを好きという気持ち、パフォーマンスをすることが心から楽しいと思う気持ちがこちらに飛んでくるような気がするのだ。それは会場全体に伝わり、見るものを幸せにする。数ある魅力の中で、私はこれがTravis Japanのショーの一番の魅力だと思っている。サイモン氏はこうも言っている。

I listened to the audience and the audience loved you.(私は観客の反応を見ていたが、観客は君たちをとても気に入ったようだよ。)

I have a feeling ... people are gonna talk about you.(人々は君たちのことを話題にするだろう。)

"enjoy"の気持ちは言語も文化も人種も越えるようだ。観客はTravis Japanのショーを心から楽しみ、彼らのことを一瞬で大好きになり、その気持ちを誰も彼もにシェアしたくなるだろう。そうして"joy"の輪はどこまでも広がっていく。デビュー後に出演したNHKのSONGS OF TOKYOという番組で、リーダーの宮近海斗アメリカで学んだこととして「自分達が楽しんでないと人を楽しませることはできない」と述べている。今後のTravis Japanのショーがますます魅力的になることは間違いなさそうだ。

 

さて、Travis Japanにとって、数字は確かにゴールではない。しかし、数字を持たない限り何も出来ないということもまた残酷な事実だ。2019年8月8日に、おそらく彼らはそれを強く意識したのではないかと感じている。言わずもがなSnow ManSixTONESのデビュー決定が発表された日で、この日を境に彼らはファンの目から見ても明らかに変わった。そしてまさにその頃から話し合い出されたのが「アメリカへの留学」なのだろう。かくしてコロナ禍で遅くなったものの2022年にLAへ留学し、WOD全米4位、世界9位、ベストオーディエンス賞、そしてAGTセミファイナル出場という十分過ぎるほどの「客観的な数字」を持って2022年10月28日、全世界配信デビューを果たした。さらに、ビルボードのグローバルエクスクルーディングUSチャートにおいて、日本人アーティストとして初のデビュー曲チャート入りを果たした。愛、感謝、伝統、誇り、夢 ― おおよそ数字からは程遠い、それでも彼らが大事に守り抜いてきたものを持ったまま、むしろそれらを武器に変えて、彼らは数字を獲得したのだと思った。

 

先日のan・an AWARDの授賞式にて、うみ(中村海人)がこうコメントしていた。

「口にすることも大事だけどそれに対して努力することもすごく大事。続けていくことで夢に一歩ずつ近づいていったんだなと思うと、努力していて無駄じゃなかったと思う。」

さらに、如恵留はデビューに際し、ブログでこう書いていた。

「綺麗事ばかりでは生きられないと言われる世の中に「馬鹿正直」に「大真面目」に正面からぶつかって、もがきながらも何かを掴み取る事が出来る、そんなグループになりたい」

努力は無駄じゃないなんて綺麗事だと言う人もいるだろう。皆で幸せに、なんて絵空事だと言う人もいるだろう。アイドルにできることなんてないと、蔑む人もいるだろう。それでも綺麗事が真実になる世界は、きっと明るい。

 

色々書いたが、最初に言及したインタビューにおいて、Travis Japanにとって成功とは何か、彼らは明確に一つの答えを出している。

”So long as we have fans who find us and what we do worthy of their love and support and who continue to offer such freely to us, we are successful.”「自分達を応援してくれるファンがいる限りは(中略)自分達は成功している。」

おそらく彼らは、自分たちを見て楽しんでくれるファンがいる限り、それがたとえ一人でも一億人でも、同じように笑って「成功だ」と喜び、有難く思うのだろう。それと同時に、もっと自分達に出来ることはないかと、挑戦を続けていくのだろう。

 

ちゃか(宮近)はSONGS OF TOKYOで、Travis Japanの未来を語ってくれた。先ほどの「自分達が楽しんでないと人を楽しませることはできない」に続けて、

「そういう部分をいろんな人に共有してもっと世の中が明るくなる、その真ん中に僕らがいるようなグループになっていきたい」

 

Travis Japanの未来を表す言葉に、これ以上のものはないと思えるほど大好きな表現だったので、この言葉でこのあまりにも長い駄文を締めたいと思う。

JUST DANCE!

JUST DANCE!

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ここからは完全なる余談なのだが、Travis Japanは世界配信デビューの際に「ジャニーズを背負う」と言っていたが、それに加えて「日本のエンタメの未来」を背負い始めている気がしている。かわって急に私自身の話をすると、今よりもほんの少し純真無垢だった高校生の頃、大好きな日本と日本の文化を世界に伝える人物になりたいという大志を抱いて外国語大学へと進んだ。が、そんな大きすぎる志は脆くも破れ、それならば、日本を背負って世界で活躍するような子供たちを育てたいという、またも大きすぎる志を抱いて英語教育の道を選んだ(それから十〇年を経た今、色々思うことはありだいぶ変わってきてはいるものの)。そんな私にとって、大好きなPLAYZONEの舞台に出ていたからというだけの理由で何となく追い始め、見守ってきた子達が10年経って全英語詞の楽曲で、日本を背負ってアメリカから世界デビューするなんて、どれほど大きなプレゼントであるか想像いただけるだろうか。自分で育てたわけでも指導したわけでもなんでもない7人ではあるけれど、私の夢を叶えてくれた7人だと思うことを許して欲しい。全世界配信デビュー、本当に本当におめでとう。